- Nov 03
- 作成者 PECRONJAPAN
2026年8月28日、政府の地震調査委員会は「近畿地域の活断層の長期評価(第一版)」を公表しました。その中で示されたのが、近畿地域全域で今後30年以内にマグニチュード(M)6.8以上の地震が発生する確率「50~60%」という評価です。
近畿地方には、大阪・京都・兵庫などの都市部を含め、数多くの活断層が分布しています。今回の評価では、これまで個別に調査されてきた主要な活断層だけでなく、周辺の活断層も含めて地域全体の地震リスクが見直されました。
では、この発生確率は何を意味するのでしょうか。また、近畿地方の中でも地域によって地震リスクにどのような違いがあるのでしょうか。
この記事では、政府が公表した最新の長期評価をもとに、近畿地方の地震リスクや活断層の特徴、南海トラフ地震との関係、家庭でできる防災対策について解説します。
1.政府が公表した最新の「近畿地域の活断層の長期評価」とは?

2026年8月28日に地震調査研究推進本部が公表した「近畿地域の活断層の長期評価」は、近畿地方の陸域および沿岸海域に分布する活断層を対象に、将来発生する可能性のある地震の規模や発生確率を総合的に評価したものです。
これまでの長期評価では、主にマグニチュード7以上の地震を引き起こす可能性がある主要活断層帯を個別に評価してきました。しかし、主要活断層帯以外でも地震による被害が発生していることから、今回は対象をM6.8以上の地震に広げ、周辺の活断層も含めて地域単位で評価しています。
まずは、今回の発表で示された主な内容を確認しましょう。
① 近畿全域でM6.8以上の地震発生確率は「50~60%」
地震調査研究推進本部の発表によると、近畿地域全域では、今後30年以内にM6.8以上の地震が発生する確率は50~60%と評価されています。
今回の評価では、近畿地方に分布する45の活断層を対象とし、それらを地域ごとにまとめて地震発生の可能性を評価しました。
注目したいのは、今回の調査が従来の主要活断層帯だけを対象としたものではないという点です。地表で確認できる断層の長さだけでなく、地質や地下構造などの情報も踏まえ、これまで評価が十分でなかった活断層も対象に含めています。
そのため、今回の50~60%という数字は、近畿地方の活断層による地震リスクを地域全体で捉え直した結果として重要な意味を持っています。
② 近畿地方は3つの地域に分けて評価されている
今回の長期評価では、近畿地方を地質構造や活断層の分布などに基づき、次の3つの区域に区分しています。
| 評価地域 | 今後30年以内のM6.8以上の地震発生確率 | 評価対象の活断層 |
|---|---|---|
| 近畿北西部 | 30% | 7断層 |
| 近畿三角帯 | 40~60% | 38断層 |
| 紀伊半島 | 7% | 1断層 |
※地震調査研究推進本部の公表資料をもとに作成。中央構造線断層帯は近畿三角帯と紀伊半島の境界に位置するため、両方の区域に属する活断層帯として評価されています。
それぞれの地域には、異なる地震活動の特徴があります。
近畿北西部:主要な活断層帯が複数存在する地域
近畿北西部は、兵庫県北部や京都府北部などを含む地域です。山崎断層帯や山田断層帯など、複数の主要活断層帯が分布しており、過去約100年間の地震活動も比較的活発と評価されています。
今回の長期評価では、今後30年以内にM6.8以上の地震が発生する確率は30%とされています。
近畿三角帯:国内でも活断層が集中する地域
近畿三角帯は、今回の評価で特に注目される地域です。国内でも活断層が集中的に分布し、それらの活動度も高いとされています。
この区域には、大阪府や京都府、滋賀県、兵庫県、奈良県、三重県などに関係する活断層が含まれています。
評価対象は38断層で、今後30年以内にM6.8以上の地震が発生する確率は40~60%とされています。
紀伊半島:既知の活断層を起源とする地震活動は低調
紀伊半島では、今回の地域評価で中央構造線断層帯が対象となっています。既知の活断層を起源とする地震活動は比較的低調と評価され、今後30年以内のM6.8以上の地震発生確率は7%とされています。
ただし、確率が他の地域より低いからといって、地震が起こらないという意味ではありません。今回の評価対象以外の地震や、南海トラフなどの海溝型地震にも注意する必要があります。
③ 「50~60%」という確率をどのように受け止めるべきか?
近畿全域で今後30年以内にM6.8以上の地震が発生する確率が50~60%と聞くと、非常に高い数字に感じるかもしれません。
ただし、この確率は、特定の日に地震が発生することを予測したものではありません。また、近畿地方に住む一人ひとりが50~60%の確率で被災するという意味でもありません。
長期評価は、過去の地震活動や活断層の性質などをもとに、一定期間内に地震が発生する可能性を評価したものです。実際に地震が発生する時期や場所、揺れの強さを正確に予測することはできません。
さらに、マグニチュードと震度は異なる指標です。マグニチュードは地震そのものの規模を表し、震度は特定の場所で観測される揺れの強さを表します。同じM6.8の地震でも、震源の深さや距離、地盤の状態などによって、地域ごとの揺れ方は異なります。
そのため、今回の50~60%という評価を「近畿全域で同じ強さの揺れが発生する」と解釈するのではなく、地域の地震リスクを知り、防災対策を考えるための重要な情報として受け止めることが大切です。
地震調査研究推進本部も、地震発生確率には不確実性が含まれ、新たな調査や知見によって評価が変わる可能性があると説明しています。
発生時期を予測することはできなくても、地震への備えは今から始めることができます。
2.近畿地方で地震リスクが高い理由と主な活断層

近畿地方には、大阪平野や京都盆地、奈良盆地などの平野・盆地と、周囲の山地との境界を中心に、多くの活断層が分布しています。
特に中央構造線より北側では、活断層の密度が高く、将来の地震活動が懸念される地域の一つです。今回の地震調査研究推進本部による長期評価でも、近畿地方にある複数の活断層が評価対象となりました。
ここでは、活断層が集中している地形的な背景と、近畿地方を代表する3つの活断層帯、内陸直下型地震の特徴について解説します。
① 近畿三角帯に活断層が集中している理由
近畿地方の地震リスクを理解するうえで、知っておきたいのが「近畿三角帯」です。
これは、近畿地方の中央部に位置する地質・地形上の地域を指す名称で、今回の地震調査研究推進本部の長期評価でも、近畿北西部や紀伊半島と区分して評価されている地域です。
2026年8月に公表された評価では、近畿三角帯に属する38の活断層が対象となっています。六甲・淡路島断層帯や上町断層帯、琵琶湖西岸断層帯なども、この地域に含まれています。
山地と平野・盆地の境界に活断層が多い
近畿地方では、中央構造線より北側において、山地と平野・盆地が交互に発達しています。こうした地形の境界や山間部には、長い年月をかけて活動してきた活断層が多く分布しています。
日本列島周辺では、複数のプレートが運動しており、その影響によって陸域の岩盤にも力が加わります。地下の岩盤にひずみが蓄積され、限界に達すると断層がずれ動き、地震が発生します。
特に近畿地方の中央部では、複数の活断層が近接して分布しているため、一つの断層だけでなく、周辺の断層も含めて地震リスクを考えることが重要です。
中央構造線より南側とは地形の特徴が異なる
一方、中央構造線より南側には紀伊山地を中心とした広大な山地が広がり、北側とは地形の特徴が異なります。気象庁の資料によると、この地域では北側と比べて、知られている活断層の数が少ないとされています。
ただし、活断層が確認されていない場所でも、地震が発生する可能性はあります。活断層の分布だけで安全性を判断せず、地域全体の地震リスクを確認することが大切です。
参考:
② 上町断層帯・六甲・淡路島断層帯・琵琶湖西岸断層帯の特徴
近畿地方には、都市部や人口密集地域の近くを通る活断層帯もあります。ここでは、特に代表的な3つの活断層帯を取り上げます。
上町断層帯:大阪平野を南北に延びる活断層帯
上町断層帯は、大阪府豊中市から大阪市、岸和田市を経て阪南市に至る活断層帯です。全体の長さは約56kmと推定されており、大阪平野の地下に広がっています。
2026年8月の最新評価では、断層帯は主に2つの区間に分けられています。
| 区間 | おおよその長さ | 想定される地震規模 |
|---|---|---|
| 上町断層帯主部区間 | 約43km | M7.6程度 |
| 上町断層帯沿岸部区間 | 約23km | M7.1程度 |
主部区間と沿岸部区間が同時に活動した場合には、M7.7程度の地震が発生する可能性も評価されています。
大阪市を含む都市部の近くに位置しているため、仮に大きな地震が発生した場合、住宅やビル、交通インフラなどに影響が及ぶことが考えられます。
また、今回の評価では断層の位置や形状、過去の活動時期などについて新たな調査結果が反映されています。主部区間の最新活動時期についても見直されており、過去の評価と発生確率が異なる部分があります。
参考:地震調査研究推進本部「上町断層帯の長期評価(一部改訂)」
六甲・淡路島断層帯:阪神・淡路大震災と関係する活断層帯
六甲・淡路島断層帯は、兵庫県宝塚市から神戸市などを経て、淡路島北部に至る活断層帯です。全体の長さは約57kmと推定されており、地形や過去の活動時期などから、主に2つの区間に分けられています。
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六甲山地南縁-淡路島東岸区間
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淡路島西岸区間
この断層帯が注目される理由の一つが、1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)との関係です。
当時の地震では、淡路島西岸区間と、六甲山地南縁-淡路島東岸区間の一部の地下が活動し、神戸市や淡路島などで甚大な被害が発生しました。
2026年の最新評価では、六甲山地南縁-淡路島東岸区間が活動した場合、M7.8程度の地震が発生する可能性があるとされています。
1995年の地震が発生した場所だけでなく、周辺の活断層帯についても、長期的な活動の可能性を確認しておくことが重要です。
参考:地震調査研究推進本部「六甲・淡路島断層帯の長期評価(一部改訂)」
琵琶湖西岸断層帯:滋賀県の琵琶湖西岸に沿って延びる活断層帯
琵琶湖西岸断層帯は、滋賀県高島市から大津市にかけて、琵琶湖の西岸に沿って延びる活断層帯です。全体の長さは約55kmと推定されており、過去の活動時期の違いから北部区間と南部区間に区分されています。
| 区間 | おおよその長さ | 想定される地震規模 |
|---|---|---|
| 北部区間 | 約29km | M7.3程度 |
| 南部区間 | 約35km | M7.4程度 |
両区間が同時に活動した場合には、M7.7程度の地震が発生する可能性もあります。
この断層帯では、過去の地震活動や地形・地質調査などをもとに、最新活動時期や地震規模が評価されています。南部区間については、1185年に発生した地震が最新活動だった可能性が示されています。
また、断層が活動した場合には、断層の東側が沈降し、琵琶湖の湖岸地域が水没する可能性も指摘されています。
滋賀県だけでなく、周辺の京都府などでも地震による揺れが想定されるため、琵琶湖周辺で暮らす人も地域のハザードマップを確認しておくことが大切です。
参考:地震調査研究推進本部「琵琶湖西岸断層帯の長期評価(一部改訂)」
これらの活断層帯は、それぞれ位置や地下構造、過去の活動時期が異なります。また、今回の長期評価に示された地震規模や確率も、各区間の評価に基づくものです。近畿地域全体の発生確率と、個々の活断層の発生確率を混同しないようにしましょう。
③ 内陸直下型地震の特徴と注意点
近畿地方で特に注意したい地震の一つが、内陸の浅い場所で発生する地震です。一般には「直下型地震」と呼ばれることもあります。
これは、陸域の地下にある活断層などが活動することで発生する地震です。海溝型地震とは異なり、震源が陸地に近い場所や都市部の地下に位置する場合があります。
震源に近い地域では強い揺れが発生しやすい
内陸直下型地震の特徴は、震源の近くで強い揺れが発生する可能性があることです。
地震の揺れの強さは、マグニチュードだけでは決まりません。震源からの距離や地下の断層の広がり、地盤の性質などによって大きく変わります。
特に大阪平野や京都盆地、奈良盆地などでは、土砂や堆積物が厚く積もった場所があり、地盤の条件によって揺れが増幅される場合があります。
また、山間部や傾斜地では、地震による揺れをきっかけに土砂崩れなどが発生する可能性もあります。
緊急地震速報が間に合わない場合もある
震源に近い場所で地震が発生した場合、緊急地震速報が発表されてから強い揺れが到達するまでの時間が非常に短くなることがあります。
場合によっては、強い揺れの到達に速報が間に合わないこともあります。そのため、緊急地震速報が出てから行動するだけでなく、日頃から家具の固定や安全な場所の確認をしておくことが重要です。
活断層から離れていても地震の被害を受ける可能性がある
活断層の地表位置が確認されていない場所でも、地震が発生することがあります。また、地下の断層は地表に見えている範囲よりも広がっている場合があり、地表の断層線から離れている場所でも強い揺れが観測される可能性があります。
そのため、地図上で自宅の近くに活断層がないからといって、地震への備えが不要になるわけではありません。
自宅周辺の地盤や建物の耐震性、避難場所なども含めて確認しておきましょう。
参考:気象庁「活断層の地震に備える―近畿地方版」、大阪管区気象台「内陸地震に備える」
近畿地方の地震リスクを考えるときは、活断層の位置や個別の発生確率だけでなく、地盤の揺れやすさや周辺の地形も確認することが大切です。次の章では、近畿地方で注意したい南海トラフ地震と内陸地震の違いについて解説します。
3.南海トラフ地震と近畿地方の内陸地震はどう違う?

近畿地方の地震リスクを考える際に、もう一つ重要なのが「南海トラフ地震」です。
これまで紹介してきた上町断層帯や六甲・淡路島断層帯などによる地震は、陸地の地下にある活断層が活動することで発生する内陸地震です。一方、南海トラフ地震は、海底にあるプレート境界で発生する大規模な海溝型地震です。
どちらも近畿地方に大きな影響を及ぼす可能性がありますが、発生する場所や揺れの広がり、津波の危険性などには違いがあります。
ここでは、それぞれの地震の仕組みと特徴、両方のリスクを考えた防災対策について解説します。
① 南海トラフ地震はプレート境界で発生する海溝型地震
南海トラフ地震とは、駿河湾から日向灘沖にかけて延びる南海トラフ沿いのプレート境界で発生する大規模な地震です。
日本列島の下には、海側のフィリピン海プレートが年間数cm程度の速度で沈み込んでいます。このとき、陸側のプレートとの境界では、互いに押し合う力によってひずみが蓄積されます。
長期間にわたって蓄積されたひずみが限界に達すると、プレート境界が大きくずれ動き、地震が発生します。
南海トラフ地震の主な特徴
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発生場所:駿河湾から日向灘沖にかけてのプレート境界
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想定される規模:マグニチュード(M)8~9クラス
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主な被害:広範囲の強い揺れ、津波、沿岸部の浸水など
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過去の主な地震:1944年の昭和東南海地震、1946年の昭和南海地震
過去の南海トラフ地震は、同じタイミングで震源域全体が活動するケースだけでなく、東側と西側で時間差をもって発生したケースもあります。1944年の昭和東南海地震と1946年の昭和南海地震も、約2年の間隔で発生しました。
このことから、次の南海トラフ地震がどの範囲で、どのような形で発生するかを正確に予測することは、現在の科学では困難とされています。
今後30年以内の発生確率は最も高いランク
地震調査研究推進本部は2025年9月26日、南海トラフ地震の長期評価を一部改訂しました。
最新の評価では、今後30年以内の発生確率について、異なる計算方法による2つの結果が示されています。
| 計算方法 | 今後30年以内の発生確率 |
|---|---|
| すべり量依存BPTモデル | 60~90%程度以上 |
| BPTモデル | 20~50% |
この2つは、異なる考え方に基づく科学的な計算結果であり、どちらか一方が正しいと決められるものではありません。地震本部は、防災対策を進めるうえでは、より高い方の評価である「60~90%程度以上」を念頭に行動することが望ましいとしています。
また、いずれの計算方法でも、南海トラフ地震は発生確率の最も高い「IIIランク(高い)」に位置付けられています。
近畿地方にも強い揺れや津波の影響が及ぶ可能性がある
南海トラフ地震の影響は、震源域に近い太平洋沿岸だけに限られません。近畿地方でも、地域によって強い揺れや津波への警戒が必要です。
特に和歌山県や三重県などの太平洋沿岸では、津波による浸水や避難が必要になる可能性があります。また、大阪府や兵庫県、京都府、奈良県、滋賀県なども、南海トラフ地震防災対策推進地域を含む府県に指定されています。
ただし、府県全域が同じ被害を受けるわけではありません。震源域との距離や地盤、沿岸部か内陸部かといった条件によって、想定される震度や津波の危険性は異なります。
自分の住んでいる地域の具体的なリスクは、自治体のハザードマップや津波浸水想定で確認しておきましょう。
参考:
② 活断層による内陸地震と南海トラフ地震の違い
南海トラフ地震と近畿地方の内陸地震では、発生する場所や影響の広がり方が異なります。
内陸地震は、陸側のプレート内部にある断層がずれ動くことで発生します。震源は比較的浅い場所に位置することが多く、都市や住宅地の近くで発生すると、狭い範囲に非常に強い揺れをもたらす可能性があります。
一方、南海トラフ地震は海底のプレート境界で発生し、広い範囲に強い揺れが伝わるほか、津波を伴う可能性があります。
| 比較項目 | 南海トラフ地震 | 近畿地方の内陸地震 |
|---|---|---|
| 発生場所 | 海底のプレート境界 | 陸側プレート内部の断層 |
| 主な発生メカニズム | 海洋プレートの沈み込みによるひずみの解放 | 地殻内部に蓄積したひずみの解放 |
| 想定規模 | M8~9クラス | 活断層によって異なる。M7クラスの地震も想定される |
| 揺れの特徴 | 広範囲に強い揺れが伝わる | 震源近くで非常に強い揺れが発生する場合がある |
| 津波 | 大規模な津波を伴う可能性がある | 通常は津波を伴わないが、沿岸海域の地殻内地震などは別途注意が必要 |
| 主な被害 | 広範囲の揺れ、津波、沿岸部の浸水など | 建物倒壊、家具転倒、火災、斜面崩壊など |
近畿地方では、1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)が代表的な内陸地震です。M7.3の地震によって神戸市や淡路島などで甚大な被害が発生しました。
このように、内陸地震は南海トラフ地震ほど広範囲に影響しない場合でも、震源に近い地域では非常に大きな被害が発生する可能性があります。
また、活断層が地表に確認されていない場所でも、浅い地震が発生することがあります。地図上で活断層から離れているからといって、地震への備えが不要になるわけではありません。
南海トラフ地震と内陸地震には、どちらも異なる種類のリスクがあることを理解しておきましょう。
参考:防災科学技術研究所「海溝型地震と活断層型地震」、気象庁「地震発生のしくみ」
③ 両方の地震リスクを考えた防災対策が重要
近畿地方では、内陸活断層による直下型地震だけでなく、南海トラフ地震による広域災害も考慮しておく必要があります。
さらに、過去の地震活動を調べると、南海トラフの巨大地震が発生する前後には、西南日本の内陸部で大きな地震が相次いだ時期があることが分かっています。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究者による解説でも、南海トラフ地震と西南日本の内陸地震の発生時期には、一定の関連が見られることが紹介されています。
ただし、すべての内陸地震が南海トラフ地震によって引き起こされるわけではありません。プレート境界の大地震による応力変化の影響も断層によって異なり、個別の活断層がいつ活動するかを正確に予測することはできません。
そのため、どちらか一方だけに備えるのではなく、両方の災害を想定した準備を進めることが大切です。
1.自宅周辺の揺れや津波のリスクを確認する
まずは自治体が公表しているハザードマップを確認し、自宅や職場周辺の想定震度、津波浸水区域、土砂災害警戒区域などを調べておきましょう。
特に海岸付近に住んでいる場合は、地震発生後に津波が到達する可能性を考え、最寄りの高台や津波避難ビル、避難経路を確認しておくことが重要です。
2.揺れによる被害を減らす
内陸地震・海溝型地震のどちらでも、建物や家具の倒壊・転倒が大きな被害につながる可能性があります。
家具や冷蔵庫、テレビなどを固定し、寝室には倒れてくる家具を置かないなど、日常生活の中でできる対策を進めましょう。また、住宅の耐震性についても確認しておくと安心です。
3.停電・断水などのライフライン停止に備える
大規模地震の後には、電気や水道、ガスなどのライフラインが停止する可能性があります。
飲料水や非常食、携帯トイレ、懐中電灯、モバイルバッテリーなどを準備し、最低3日分、できれば1週間分の備蓄を目指しましょう。
さらに、停電が長引く可能性も考え、スマートフォンや照明、必要な家電に給電するための予備電源についても検討しておくとよいでしょう。
地震は発生する日時を正確に予測できません。だからこそ、南海トラフ地震と内陸地震の両方を想定し、自宅の環境や生活スタイルに合った防災対策を日頃から進めておくことが重要です。
参考:JAMSTEC「南海トラフ地震と西南日本活動期の関係」、気象庁「南海トラフ地震について」
4.M6.8以上の地震が近畿地方で発生した場合に想定される被害

近畿地方でM6.8以上の地震が発生した場合、地域によっては建物の倒壊や火災、液状化、土砂災害など、さまざまな被害が発生する可能性があります。
特に都市部では、住宅や商業施設が密集しているため、地震による直接的な被害だけでなく、停電や断水、交通機関の停止など、日常生活に大きな影響が及ぶことも考えられます。
ただし、マグニチュードだけで実際の被害を判断することはできません。同じ規模の地震でも、震源の深さや距離、地盤の状態、建物の耐震性などによって、地域ごとの揺れや被害は大きく異なります。
ここでは、近畿地方で大きな地震が発生した場合に注意したい主な被害を3つの観点から解説します。
① 建物倒壊や家具の転倒による被害
大きな地震でまず注意したいのが、建物の損傷や倒壊、家具の転倒・落下による被害です。
特に内陸の活断層による地震では、震源に近い地域で非常に強い揺れが発生する場合があります。建物の構造や築年数、地盤の状況によっては、住宅の壁や柱に大きな損傷が生じたり、倒壊したりする可能性があります。
建物の耐震性によって被害の程度は異なる
地震による建物被害は、建築された年代や構造、耐震補強の有無などによって変わります。
例えば、1981年6月に導入された新耐震基準より前に建てられた住宅は、現在の基準で建てられた住宅と比べて耐震性能が不足している可能性があります。特に木造住宅では、壁や柱の配置、接合部の補強状態なども被害の程度に関係します。
ただし、1981年以降の建物であれば必ず安全というわけではありません。建物の維持管理状況や地盤、施工状態なども影響するため、必要に応じて専門家による耐震診断を受けることが重要です。
家具の転倒やガラスの破損にも注意
建物そのものが倒壊しなくても、室内では家具の転倒や家電製品の移動、窓ガラスの破損などが発生する場合があります。
気象庁の震度階級関連解説表によると、震度6弱では固定していない家具の大半が移動し、倒れるものもあります。震度6強になると、固定していない家具のほとんどが移動し、倒れるものが多くなります。
このような被害は、室内にいる人のけがや避難の妨げにつながるため、日頃から対策しておく必要があります。
特に注意したいのは次のような場所です。
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寝室:就寝中にタンスや本棚が倒れてくる危険性
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リビング:テレビや収納家具が移動・転倒する危険性
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キッチン:食器棚の扉が開き、食器や調理器具が落下する危険性
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窓際:ガラスが破損し、破片が室内に飛散する危険性
地震発生時に家具や家電が倒れないよう、L字金具や転倒防止器具などで固定し、寝室や避難経路にはできるだけ大きな家具を置かないようにしましょう。
② 火災・液状化・土砂災害のリスク
地震による被害は、建物の倒壊だけではありません。揺れをきっかけとして火災や液状化、土砂災害などの二次災害が発生する可能性もあります。
近畿地方では、大阪平野などの都市部、琵琶湖周辺の低地、紀伊半島などの山間部といった、地域ごとに異なる地形的な特徴があります。それぞれの場所で注意したい災害も異なります。
地震後に発生する火災と通電火災
大きな地震では、建物や電気設備の損傷によって火災が発生することがあります。
例えば、地震の揺れによって電気ストーブが転倒し、周囲の衣類やカーテンなどに接触して出火するケースがあります。また、停電中に電気製品や配線が破損した状態のまま、電力が復旧することで発生する「通電火災」にも注意が必要です。
通電火災を防ぐためには、避難する際に可能な範囲で分電盤のブレーカーを切ることが重要です。また、揺れを感知して自動的に電気を遮断する「感震ブレーカー」の設置も対策の一つです。
ただし、地震発生直後は、まず自分や家族の身の安全を確保することを優先してください。
参考:政府広報オンライン「感震ブレーカー 地震発生時に電気を自動的に遮断」
大阪平野や琵琶湖周辺などで注意したい液状化
液状化とは、地下水を多く含んだ緩い砂地盤に強い揺れが加わることで、地盤が一時的に液体のような状態になる現象です。
特に、埋立地や旧河道、砂地盤など、地下水位が高く地盤が緩い場所で発生しやすいとされています。
液状化が起こると、地面から水や砂が噴き出したり、建物や電柱が傾いたり、地下の配管やマンホールが浮き上がったりすることがあります。
近畿地方では、大阪湾沿岸部や河川周辺の低地など、地盤条件によって液状化の可能性がある場所があります。大阪府も2026年3月31日に、南海トラフ地震および上町断層帯などの直下型地震を想定した震度分布・液状化可能性の見直し結果を公表しています。
ただし、同じ市町村内でも地盤の状態によって液状化の可能性は異なります。自宅や勤務先周辺のリスクは、自治体が公表する液状化マップで確認しておきましょう。
参考:
山間部や傾斜地では土砂災害にも注意
近畿地方の山間部や丘陵地では、強い揺れによって斜面が不安定になり、土砂崩れや地すべりが発生する可能性があります。
特に、急傾斜地や盛土造成地、谷沿いの地域などでは、地震動によって地盤が崩れる危険性があります。また、崩れた土砂が水や谷底の堆積物を巻き込むことで、土石流となって流下する場合もあります。
地震によって大規模な斜面崩壊が発生すると、住宅や道路が埋まるだけでなく、集落が孤立する原因にもなります。
土砂災害警戒区域に住んでいる場合は、自治体のハザードマップで危険箇所や避難場所を確認し、地震後に斜面の亀裂や落石などの異常が見られた場合は、近づかないようにしましょう。
③ 停電・断水・交通機関への影響
大規模な地震が発生すると、建物や道路などの直接的な被害に加えて、電気・水道・ガスといったライフラインにも影響が及ぶ可能性があります。
特に都市部では、電力設備や水道管、交通網などが広範囲に整備されているため、一部の設備が損傷しただけでも多くの人の日常生活に影響することがあります。
停電によって日常生活に必要な電気が使えなくなる
地震の揺れによって電柱や送電設備、変電設備などが損傷すると、広い範囲で停電が発生する可能性があります。
停電すると、照明や冷蔵庫、エアコン、スマートフォンの充電などができなくなります。また、マンションやビルでは、給水ポンプやエレベーターなどの設備が停止する場合もあります。
特に、停電中に通信機器やスマートフォンのバッテリーが切れると、気象情報や避難情報の確認、家族との連絡が難しくなることも考えられます。
断水によって飲料水や生活用水の確保が難しくなる
地震によって水道管や配水施設が損傷すると、断水が発生する可能性があります。
また、マンションなどの集合住宅では、電力で給水ポンプを動かしている建物の場合、停電によって水道設備が正常に動かなくなることもあります。
水道が復旧するまでの間は、飲料水だけでなく、トイレや手洗いなどに必要な生活用水も確保しなければなりません。
そのため、普段から飲料水を備蓄し、携帯トイレなどの衛生用品も準備しておくことが重要です。
鉄道・道路の停止によって移動や物流にも影響が出る
大きな地震では、鉄道や高速道路などの交通機関も安全確認のために運転を見合わせたり、通行規制を行ったりする場合があります。
また、道路の損傷や橋梁の被害、土砂崩れなどによって、物資の輸送が遅れる可能性もあります。
気象庁の震度階級関連解説表では、震度4程度以上の揺れが観測された場合、鉄道や高速道路などで安全確認のための運転見合わせや速度規制、通行規制が行われることがあると説明されています。
さらに、揺れが強い地域では電話やインターネットがつながりにくくなったり、エレベーターが安全確認のために停止したりすることもあります。
地震の規模だけでなく、ライフラインへの影響も想定しておく
| 影響を受けるもの | 想定される問題 | 日常生活への影響 |
|---|---|---|
| 電気 | 電柱・送電設備などの損傷 | 停電、照明や家電の停止 |
| 水道 | 水道管・配水設備などの損傷 | 断水、飲料水・生活用水の不足 |
| ガス | 安全装置の作動や供給設備の被害 | ガス供給の停止 |
| 鉄道・道路 | 線路・橋梁・道路の安全確認や損傷 | 通勤・通学、移動、物流への影響 |
| 通信 | 通信の集中や設備の被害 | 電話やインターネットがつながりにくくなる |
| エレベーター | 地震管制装置による自動停止 | 高層マンションなどで移動が制限される |
※実際に発生する影響や復旧までの時間は、地震の震度、設備の被害状況、地域の条件などによって異なります。
気象庁によると、震度5弱程度以上では断水や停電が発生することがあり、震度6強程度以上の揺れでは広い地域で電気・水道・ガスの供給が停止する場合があります。
こうした被害に備えるためには、建物や家具の耐震対策に加え、ライフラインが停止した場合でも一定期間生活できるよう、日頃から水・食料・照明・通信手段などを準備しておくことが大切です。
参考:
近畿地方で大きな地震が発生した場合、被害の内容は住んでいる地域によって大きく異なります。建物倒壊や火災だけでなく、停電・断水・交通機関の停止といった二次的な影響も考えておくことが重要です。
地震の発生そのものを防ぐことはできませんが、住宅の耐震化や家具の固定、備蓄などによって被害を軽減できる可能性があります。次の章では、近畿地方で暮らす人が今から取り組める具体的な地震対策を紹介します。
5.近畿地方で暮らす人が今からできる地震対策

近畿地方では、南海トラフ地震だけでなく、上町断層帯や六甲・淡路島断層帯などによる内陸地震にも注意が必要です。大きな地震が発生した場合、建物の倒壊や家具の転倒だけでなく、停電・断水、交通機関の停止など、日常生活にもさまざまな影響が及ぶ可能性があります。
地震が発生する日時や場所を正確に予測することはできません。しかし、住宅の安全性を高めたり、避難経路を確認したり、必要な物資を備蓄したりすることで、被害を軽減できる可能性があります。
ここでは、近畿地方で暮らす人が日頃から取り組んでおきたい3つの地震対策を紹介します。
① 住宅の耐震化と家具の固定で、地震による被害を減らす
地震への備えで最初に取り組みたいのが、住宅そのものの耐震性を確認することです。
建物の耐震性能は、建築された時期や構造、地盤、これまでの維持管理状況などによって異なります。特に、1981年6月の新耐震基準導入より前に建てられた住宅は、現在の基準に比べて耐震性が十分でない場合があります。
旧耐震基準の住宅は耐震診断を検討する
1981年5月31日までに建築確認を受けた建物は、一般に「旧耐震基準」で建てられた住宅に該当します。
旧耐震基準の建物がすべて危険というわけではありませんが、大きな地震に対する安全性を確認するため、一度専門家による耐震診断を受けることが重要です。
診断の結果、耐震性が不足している場合は、壁や柱の補強、基礎部分の改修、屋根の軽量化などを検討できます。
また、国や自治体では住宅の耐震診断や耐震改修に関する補助制度を設けている場合があります。近畿地方でも大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県など、自治体によって対象となる住宅や補助条件が異なるため、各自治体の窓口で確認するとよいでしょう。
家具や家電の転倒・落下を防ぐ
建物の耐震性を確保するだけでなく、室内の安全対策も欠かせません。
地震の揺れによって、タンスや本棚、食器棚、テレビなどが転倒・移動すると、人が下敷きになったり、避難経路がふさがれたりする可能性があります。
特に、就寝中や夜間に地震が発生した場合は、暗い室内で倒れた家具や散乱した食器につまずき、けがをする危険性もあります。
日頃から、次のような対策を進めましょう。
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大型家具を固定する: L字金具や突っ張り棒などを使い、タンスや本棚が転倒しないようにする
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テレビや家電を固定する: 転倒防止ベルトや耐震マットなどを活用する
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寝室の配置を見直す: ベッドや布団の近くには、倒れてくる可能性がある大型家具を置かない
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ガラスの飛散を防ぐ: 食器棚や窓ガラスに飛散防止フィルムを使用する
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避難経路を確保する: 玄関や廊下、ドア付近に転倒しやすい家具を置かない
また、地震の揺れによって電気製品や配線が損傷すると、停電復旧後に通電火災が発生する可能性もあります。感震ブレーカーを設置することも、電気火災を防ぐための対策の一つです。
② ハザードマップと避難場所を確認しておく
地震への備えでは、自宅周辺にどのような災害リスクがあるのかを知っておくことも大切です。
近畿地方は地域によって地形や地盤が大きく異なります。大阪平野などの都市部では液状化や建物被害、紀伊半島や山間部では土砂災害、太平洋沿岸では津波など、住んでいる場所によって注意すべき災害が変わります。
そのため、都道府県単位の地震発生確率だけでなく、自宅や職場の周辺で想定される揺れや災害を確認しておきましょう。
国土交通省のハザードマップポータルサイトを活用する
国土交通省が公開している「ハザードマップポータルサイト」では、住所や地図から周辺の災害リスクを確認できます。
主に次の2つの機能があります。
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重ねるハザードマップ: 洪水、津波、土砂災害などの災害リスクや地形分類、避難場所などを地図上に重ねて確認できる
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わがまちハザードマップ: 市区町村が公開しているハザードマップを検索できる
自宅周辺の地形や災害リスクを把握したい場合に便利です。
自治体が公表する地震ハザードマップも確認する
国のハザードマップポータルサイトに加えて、自治体が公表している地震ハザードマップも確認しておきましょう。
例えば、大阪府では2026年3月31日に、南海トラフ地震や上町断層帯、生駒断層帯、有馬高槻断層帯などを想定した震度分布・液状化可能性の見直し結果を公表しています。
また、京都市では2026年6月に更新された地震ハザードマップを公開しており、行政区ごとに想定される地震や断層に応じた震度情報を確認できます。
自治体ごとに想定条件や地図の内容が異なるため、自分の住んでいる地域の最新資料を確認することが大切です。
参考:
避難場所と避難経路を家族で共有する
ハザードマップを確認したら、災害時にどこへ避難するのか、家族で話し合っておきましょう。
自宅から最寄りの指定緊急避難場所までの経路だけでなく、複数のルートを確認しておくと、道路がふさがれた場合にも対応しやすくなります。
また、避難先は災害の種類によって適切な場所が異なる場合があります。津波や土砂災害の危険がある地域では、それぞれの災害に対応した避難先を確認してください。
家族が別々の場所にいるときに地震が発生する可能性も考え、集合場所や連絡方法を決めておきましょう。電話がつながりにくい場合に備えて、災害用伝言ダイヤル「171」や災害用伝言板などの使い方を確認しておくことも役立ちます。
③ 水・食料・通信手段・停電対策を備蓄する
大規模な地震が発生すると、道路や交通機関の被害によって支援物資が届くまでに時間がかかる可能性があります。そのため、各家庭で一定期間生活できるよう、水や食料、生活用品などを備蓄しておくことが重要です。
防災庁も2026年11月2日に発表した「事前防災徹底のための緊急要請」で、家庭における水・食料・携帯トイレなどの備蓄や、非常持ち出し品の準備を呼びかけています。
水と食料は最低3日分、できれば1週間分を目安に
農林水産省や防災庁では、家庭で最低3日分、できれば1週間分の食料などを備蓄することを推奨しています。
飲料水は、1人あたり1日約3Lが目安です。4人家族の場合、1週間分を確保するなら次の量が必要になります。
3L × 4人 × 7日 = 84L
これは飲料水と調理用水を含む目安であり、トイレや洗面などに使用する生活用水は別途考えておく必要があります。
食料については、普段食べている食品を少し多めに購入し、使った分を補充する「ローリングストック」を取り入れると、無理なく備蓄を続けられます。
| 備蓄品 | 目安・用途 |
|---|---|
| 飲料水 | 1人1日約3L |
| 非常食 | 最低3日分、できれば1週間分 |
| 携帯トイレ | 断水や排水設備の使用制限への備え |
| 常備薬 | 持病の薬や救急用品 |
| 衛生用品 | トイレットペーパー、ウェットティッシュ、マスクなど |
| 防寒・保温用品 | 毛布、使い捨てカイロ、アルミ製保温シートなど |
乳幼児や高齢者、食物アレルギーがある人などは、一般的な備蓄品に加えて、それぞれの生活に必要な物資も準備しておきましょう。
停電時の情報収集と通信手段を確保する
地震の後に停電が発生すると、テレビやインターネットが使用できなくなる可能性があります。また、スマートフォンの充電が切れると、気象情報や避難情報の確認、家族との連絡が難しくなる場合があります。
そのため、次のようなものを準備しておくとよいでしょう。
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モバイルバッテリーと充電ケーブル
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携帯ラジオと予備電池
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懐中電灯やLEDランタン
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スマートフォンの充電手段
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家族や自治体、電力会社などの緊急連絡先
スマートフォンは、画面の明るさを下げる、不要なアプリを終了する、必要なとき以外は通信を控えるなど、バッテリーを節約する使い方も確認しておきましょう。
停電が長引く場合に備えて予備電源を検討する
停電中は、照明や通信機器だけでなく、冷蔵庫や給水ポンプ、必要な家電などにも影響が及ぶ場合があります。
特に、家庭用医療機器など電力の確保が必要な機器を使用している家庭では、停電時の予備電源や代替手段について、機器メーカーや医療機関に確認しておくことが重要です。
また、スマートフォンやLED照明などの比較的消費電力が小さい機器だけでなく、使用したい家電がある場合は、必要な電力量を事前に計算しておくと、どの程度の予備電源が必要なのかを判断しやすくなります。
日頃から本体を充電しておき、停電時に使用する機器の優先順位を決めておくことも大切です。
災害時の停電対策では、電源を確保するだけでなく、水や食料、トイレ、照明、情報収集手段などをまとめて準備しておくことが重要です。家族構成や住環境に合った備蓄を進め、いざというときに落ち着いて行動できるようにしましょう。
6.地震後の停電に備えるポータブル電源の活用
大きな地震が発生すると、送電設備や電柱などの被害によって停電が起こる可能性があります。停電が長引けば、スマートフォンの充電や夜間の照明、通信機器の使用など、日常生活のさまざまな場面に影響が及びます。
こうした停電への備えとして検討したいのが、あらかじめ電気を蓄えておけるポータブル電源です。停電時にも、接続した電気機器へ給電できるため、情報収集や照明、対応する家電の使用などに役立ちます。
また、ソーラーパネルに対応したモデルであれば、日照条件が整った際に太陽光を利用して充電することもできます。
ただし、ポータブル電源だけで家庭全体の電力をまかなえるわけではありません。使用する機器や必要な時間に合わせて、適切な容量と出力を選ぶことが重要です。
① 停電時に必要な電力量と容量の選び方
ポータブル電源を選ぶ際は、まず停電時に何を使用したいのかを整理しましょう。
スマートフォンやLEDライトなどの小型機器だけを使う場合と、冷蔵庫や電気ケトルなどの家電も使用したい場合では、必要な容量や出力が大きく異なります。
必要な容量は消費電力と使用時間から計算する
ポータブル電源のバッテリー容量は、Wh(ワットアワー)という単位で表示されます。これは、どれくらいの電力量を蓄えられるかを示す数値です。
必要な電力量は、基本的に次の式で計算できます。
必要な電力量(Wh)= 消費電力(W)× 使用時間(h)
例えば、停電時に次のような機器を使用するとします。
| 使用する機器 | 消費電力の想定 | 使用時間 | 必要な電力量 |
|---|---|---|---|
| LEDライト | 5W | 5時間 | 25Wh |
| Wi-Fiルーター | 10W | 8時間 | 80Wh |
| 電気毛布 | 50W | 8時間 | 400Wh |
| 合計 | 505Wh |
※消費電力は計算例です。実際の数値は機器や使用状況によって異なります。
この場合、合計で505Whの電力量が必要になります。しかし、ポータブル電源はAC出力への変換時などに電力ロスが発生するため、バッテリー容量が505Whあれば必ずすべての機器を使用できるというわけではありません。
例えば、実際に使用できる電力量をバッテリー容量の約80%と仮定すると、必要なバッテリー容量は次のようになります。
505Wh ÷ 0.8 = 約632Wh
このように、使用する機器と時間から必要な電力量を計算し、変換ロスなどを考慮して余裕のある容量を選ぶことが大切です。
容量(Wh)だけでなく定格出力(W)も確認する
もう一つ重要なのが、AC定格出力です。
容量(Wh)はどれくらいの電力量を蓄えられるかを示すのに対し、定格出力(W)は一度にどれくらいの電力を供給できるかを示します。
例えば、消費電力1,000Wの電気ケトルを使用する場合、AC定格出力が600Wのポータブル電源では動作させられません。一方、定格出力が1,500W以上のモデルであれば、基本的には出力条件の範囲内で使用を検討できます。
また、冷蔵庫やポンプなどのモーターを搭載した機器は、起動時に通常運転時より大きな電力が必要になる場合があります。定格出力だけでなく、瞬間最大出力にも注意しましょう。
防災用として選ぶ場合は、次の2点をセットで確認することが重要です。
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容量(Wh): スマートフォンや照明、家電などをどのくらいの時間使えるか
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定格出力(W): 使用したい家電を動かせるだけの電力を供給できるか
参考:PECRON「ポータブル電源の容量はどう選ぶ?WhとWの違いからわかる失敗しない考え方」、PECRON「災害時に備えておきたい非常用電源おすすめ」
② 停電対策におすすめのPECRONポータブル電源4選
必要な電力量や使用する家電が分かったら、自分の生活環境に合ったポータブル電源を選びましょう。
ここでは、容量・出力・持ち運びやすさが異なる4つのモデルを紹介します。
| モデル | バッテリー容量 | AC定格出力 | 本体重量 |
|---|---|---|---|
| F3000LFP | 3,072Wh | 3,600W | 約28.7kg |
| F1000LFP | 960Wh | 1,500W | 約10.85kg |
| E500LFP | 576Wh | 600W | 約6.75kg |
| E300LFP | 288Wh | 600W | 約4.8kg |
※本体重量の目安です。AC出力は製品の公式仕様表記に基づきます。使用する機器の消費電力や起動電力、接続条件を事前に確認してください。
PECRON F3000LFP|長時間の停電や複数の家電への給電に

PECRON F3000LFPは、3,072Whの大容量バッテリーとAC定格出力3,600Wを備えたモデルです。
4モデルの中で最も大きな容量と出力を備えており、長時間の停電に備えたい家庭や、複数の電気機器を組み合わせて使用したい場合に適しています。
例えば、停電時には照明やスマートフォンの充電だけでなく、消費電力が比較的大きい家電への給電も検討できます。冷蔵庫や電子レンジ、調理家電などを使用する場合も、各機器の消費電力や起動時の電力が製品の出力条件に収まるか確認しましょう。
また、最大1,600Wのソーラー入力に対応しています。対応するソーラーパネルと組み合わせることで、停電が長引いた場合にも、日照条件が整えば電力を補充できます。
一方、本体重量は約28.7kgあるため、頻繁に持ち運ぶ用途には向きにくい面があります。自宅の防災用電源として定位置に保管したり、車への積載を想定したりするなど、設置場所や移動方法も考えておくとよいでしょう。
主な仕様
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| バッテリー容量 | 3,072Wh |
| バッテリー種類 | リン酸鉄リチウムイオン電池 |
| AC定格出力 | 3,600W |
| 瞬間最大出力 | 4,500W(5秒) |
| 最大ソーラー入力 | 1,600W |
| UPS機能 | 対応(100V時最大1,500W) |
| 本体重量 | 約28.7kg |
PECRON F1000LFP|容量と出力のバランスを重視する家庭に

PECRON F1000LFPは、960Whのバッテリー容量と1,500WのAC定格出力を備えたモデルです。
スマートフォンや照明、Wi-Fiルーターなどに加えて、ノートパソコンや扇風機、対応する家電なども使用したい場合に検討しやすい容量と出力です。
また、最大600Wのソーラー入力に対応しているため、対応するソーラーパネルを利用した充電も可能です。停電時に電力を使い切ってしまった場合でも、天候や設置環境が整えば充電方法を確保できます。
本体重量は約10.85kgで、大容量モデルと比べると持ち運びやすい点も特徴です。自宅で防災用として備えるだけでなく、日常生活やアウトドアなどでも活用したい人に向いています。
主な仕様
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| バッテリー容量 | 960Wh |
| バッテリー種類 | リン酸鉄リチウムイオン電池 |
| AC定格出力 | 1,500W |
| 最大ソーラー入力 | 600W |
| UPS機能 | 対応(最大1,500W) |
| 本体重量 | 約10.85kg |
PECRON E500LFP|通信機器や小型家電を中心とした停電対策に

PECRON E500LFPは、576Whのバッテリー容量と600WのAC定格出力を備えたコンパクトモデルです。
スマートフォンやタブレット、LEDライト、Wi-Fiルーター、ノートパソコンなど、比較的消費電力の小さい機器を中心に使いたい場合に適しています。
USB-Cは最大100Wの出力に対応しているため、対応するノートパソコンなどをACアダプターなしで充電できる場合もあります。また、USB-AやDC出力、ワイヤレス充電にも対応しており、機器に合わせた給電方法を選べます。
本体重量は約6.75kgで、持ち運びやすさも特徴です。自宅の停電対策に加えて、車中泊やキャンプなど、日常からアウトドアまで幅広く活用できます。
ただし、AC定格出力は600Wなので、消費電力の大きな電子レンジや電気ケトルなどには対応できない場合があります。使用する機器の仕様を確認しておきましょう。
主な仕様
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| バッテリー容量 | 576Wh |
| バッテリー種類 | リン酸鉄リチウムイオン電池 |
| AC定格出力 | 600W |
| 瞬間最大出力 | 1,200W |
| USB-C出力 | 最大100W |
| 最大ソーラー入力 | 100W |
| 本体重量 | 約6.75kg |
PECRON E300LFP|軽量・コンパクトな非常用電源を探している人に

PECRON E300LFPは、288Whのバッテリー容量と600WのAC定格出力を備えた小型モデルです。
4モデルの中で最も容量が小さい一方、本体重量は約4.8kgと軽量で、保管スペースが限られている家庭でも検討しやすいサイズです。
スマートフォンやLEDライト、タブレットなどの充電を中心に、必要最低限の電源を確保したい場合に適しています。また、USB-Cは最大100WのPD出力に対応しているため、対応するノートパソコンなどへの給電にも活用できます。
AC定格出力は600Wなので、消費電力の範囲内であれば小型家電にも給電できます。ただし、バッテリー容量は288Whと比較的小さいため、長時間の使用や複数の家電への給電を考えている場合は、使用時間を事前に計算しておきましょう。
主な仕様
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| バッテリー容量 | 288Wh |
| バッテリー種類 | リン酸鉄リチウムイオン電池 |
| AC定格出力 | 600W |
| USB-C出力 | 最大100W |
| 最大ソーラー入力 | 100W |
| UPS出力 | 600W |
| 本体重量 | 約4.8kg |
③ 家庭での防災・普段使いに合わせた選び方
ポータブル電源を選ぶ際は、単純に容量が大きいモデルを選べばよいというわけではありません。家族構成や使用したい機器、保管場所、持ち運ぶ頻度などによって、適した製品は異なります。
例えば、スマートフォンや照明などの電源を確保することが主な目的なら、コンパクトなモデルでも対応できる場合があります。一方、停電時に複数の家電を使いたい場合や、長時間の電力確保を重視するなら、大容量・高出力のモデルが候補になります。
家庭の停電対策では、必要な電力量を優先する
家族で在宅避難することを想定する場合は、使用したい機器と必要な時間を整理しておきましょう。
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スマートフォン・照明・ラジオなどが中心:小型・中容量モデルを検討
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通信機器やノートパソコン、扇風機なども使いたい:中容量モデルを検討
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冷蔵庫や複数の家電にも給電したい:大容量・高出力モデルを検討
特に冷蔵庫や電子レンジなどは、通常時の消費電力だけでなく、起動時の電力や使用時間も考慮する必要があります。
また、医療機器など生命や健康に関わる機器を使用している家庭では、ポータブル電源だけに頼らず、医療機関や機器メーカーに停電時の予備電源や対応方法を確認しておくことが重要です。
普段使いと兼用すれば、災害時にも使いやすい
ポータブル電源は、災害時だけでなく、日常生活の中でも活用できます。
例えば、スマートフォンやノートパソコンの充電、アウトドアでの照明、小型家電への給電など、普段から使っておくことで操作方法や出力ポートの位置を把握できます。
ただし、保管している間もバッテリー残量は変化します。製品の取扱説明書に従って適切な残量を維持し、定期的に本体の状態を確認しましょう。
ソーラーパネルなど、停電後の充電方法も考えておく
大規模地震では、停電が長引く可能性もあります。ポータブル電源を選ぶ際は、容量だけでなく、停電後にどのような方法で電力を補充できるかも重要です。
対応するソーラーパネルを利用すれば、日照条件が整った場合に太陽光で充電できます。ただし、天候や季節、設置場所などによって発電量は変わるため、太陽光だけに頼るのではなく、停電が発生する前に本体を充電しておくことが基本です。
また、地震直後は建物や周辺設備に被害が発生している可能性があります。ポータブル電源やソーラーパネルを使用する際も、落下物や浸水、火災などの危険がないことを確認し、安全な環境で使用してください。
地震後の停電対策では、ポータブル電源の容量や出力だけでなく、飲料水・食料・照明・通信手段などを含めた総合的な備えが重要です。自分の家庭で何が必要なのかを整理し、無理なく活用できる予備電源を選びましょう。
まとめ|近畿地方の地震リスクを知り、今からできる備えを始めよう
2026年8月に公表された近畿地域の活断層の長期評価では、今後30年以内にM6.8以上の地震が発生する確率が、近畿全域で50~60%と評価されました。特に、活断層が集中する近畿三角帯では、地域ごとの地震リスクを把握しておくことが重要です。
また、近畿地方では上町断層帯や六甲・淡路島断層帯などによる内陸地震だけでなく、南海トラフ地震による広範囲の揺れや津波にも備える必要があります。
地震が発生する日時や場所を正確に予測することはできませんが、日頃からの準備によって、被害を軽減できる可能性があります。
まずは、自宅周辺のハザードマップを確認し、想定される震度や液状化、津波、土砂災害などのリスクを把握しましょう。住宅の耐震性を確認し、家具や家電の固定、避難経路の確保など、身近な対策から進めることも大切です。
さらに、飲料水や食料、携帯トイレ、常備薬、懐中電灯、携帯ラジオなどを最低3日分、できれば1週間分備蓄しておきましょう。停電に備えて、スマートフォンや通信機器への充電手段、必要な電気機器を使用するための予備電源についても考えておく必要があります。
ポータブル電源は、停電時の照明やスマートフォンの充電、対応する家電への給電などに活用できる備えの一つです。選ぶ際は、使用したい機器の消費電力や必要な使用時間、バッテリー容量、定格出力を確認し、自分の家庭に合ったものを選びましょう。
地震への備えは、災害が発生してから始めるものではありません。
近畿地方の地震リスクを正しく理解し、住宅の安全対策や備蓄、停電への備えなど、今日からできる準備を少しずつ進めていきましょう。

















































